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シベリア鉄道

今日から夏休み。今年はどこへも行かず、家にいる。「雪かき」のような仕事がたまっているので、それをやっつけつつ、観たいDVDや読みたい本(句集含む)にどっぷり、という算段なのだけれど、どうなることだろうか。

「雪かき」第一弾として、自室の整理と掃除を始めたのだが、床の上に散乱しているものを眺めているうちに、突然部屋の模様替えを思いつく。机の位置を変えるとスペースができ、そこに本棚を購入して収納すれば、この床の散乱はきれいさっぱりなくなるではないか。
自分の思いつきに自分で感心しながら、さっそくパソコンのコードを外し始める。

机の下に潜ってコードを探りながら、ふと、今頃Tさんはモスクワあたりだろうか、と思った。Tさんは仕事でいつもお世話になっている技術翻訳者でシネ友。ウラジオストクからモスクワまで、2週間以上かけて、夫婦でシベリア鉄道に乗りに行った。出発前にもらったメールには、「途中下車しながらの旅です。風呂も入らず、着替えもできず、座席に座りっぱなしです。ボクはともかく、連れ合いにはちょっと気の毒。モスクワからプラハに足を伸ばし、プラハから空路日本です」というようなことが書いてあった。

プラハには20年ほど前に行ったことがあるが、中世の面影を残している古都で、中部ヨーロッパの豊饒を馥郁と感じる街だった。日本文化を学んでいるというプラハ大学の女子大生が、流ちょうな日本語でプラハの街を案内してくれたのをよく覚えている。プラハ城、カレル橋、カフカが『変身』を書いたという石の家。映画『アマデウス』は、モーツァルトの生きた時代の風景を求めて、大部分をプラハで撮影したという。
この20年で欧州、とりわけ東欧は激変した。プラハも変わっただろうか。

などと考えながら作業していると、いつのまにか足の踏み場のない部屋になっている。机を移動できる空間を確保しながら、周囲のものをどけてゆく。お昼になったが、昼食はパスすることに。こういう作業に没頭すると、わりに寝食を忘れてしまうたちなのだ。

シベリア鉄道と言えば、と、頭がまたそこへ戻った。やっぱり大瀧詠一だ。「さらばシベリア鉄道」は、『A LONG VACATION』に入っていた曲だったな。ちょうど社会人になった頃に出たアルバムだった。でもその前に、太田裕美が歌っていたような気もする。どちらが先だったのか。
いずれにしても、あのアルバムは、ほんとうによく聴いた。
「さらばシベリア鉄道」は、松本隆の歌詞が、なんだかとっても忘れられないのだった。特に、

  誰でも心に冬をかくしてると言うけど
  あなた以上冷ややかな人はいない

という部分と、

  君は近視まなざしを読みとれない

というあたり。
「誰でも心に冬をかくしてると言うけど」って言うけど、そんなことふつう言わないと思う。「近視」なんていう直截的な言葉が歌詞に出てくるのも、妙な味がする。
あのアルバムでは、「恋するカレン」も好きだった。振られる曲なのにとても涼しげなのは、振られる彼の、カレンに対する恨みより愛の方が勝っているからなんだと思う。

頭の中で大瀧詠一がぐるぐるしているうちに、机の移動が完了した。散らかっていたものをとりあえずまとめて積み上げて、模様替え完了。夏休み第1日はDVDまで手が届かず、「雪かき」で終わってしまった。

窓の外は、もう暮れかけている。ミンミンゼミが鳴いている。日がすこし短くなりかけていることに気づくと、夏も終わりだな、と思う。
空腹で、お腹がぐう、と鳴った。
by shino_moon | 2009-08-21 22:24 | その他 | Comments(0)


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