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銀座難民

職場が銀座にあるので、ランチはいつも銀座である。「うらやましい」と言われたこともあるけれど、当人にとってはちっとも嬉しくない。不景気のせいか最近は銀座のランチ価格もリーズナブルになってきたけれど、それでも、たぶんまだ他の街と比べると、高い。

そうはいっても、いくつか気に入っているお店はあり、昼休みは「なるべく読書の時間」ということにしているので、たいがいひとりでランチに行く。
ところが最近、気に入ってよく行くお店が次々に閉店してゆくのだ。銀座を歩く姿がつるはしを持った死に神になってやしないかと心配になるぐらい、ほんとうに、次から次へと。どうしてなのか、つらつら考えてみたら、答えはわりに簡単だった。
私は、空いているお店が好きなのだった。

こうして次々に落ち着けるお店が閉店していくなか、昨日、また1軒、お気に入りになりそうな店を見つけた。
そこはもともと「ダカーポ」という名の喫茶店で、20数年前からずっとそこにあった。10数年前、仕事の打ち合わせをするべく席に座ったら、隣のテーブルに大沢誉志幸が座ってやはり仕事の打ち合わせをしていて、「ずいぶん地味なところで打ち合わせするんだな」と、それよりさらに数年前、大沢誉志幸のファンクラブに入っていた過去を持つ私の気持ちが少し盛り下がった、思い出の喫茶店なのである。
そんなことはどうでもよかった。
その「ダカーポ」は、ランチタイムには、カレーとかナポリタンスパゲッティとかBLTサンドイッチのような定番メニューに飲み物・サラダ付きのランチを出していて、値段もまあリーズナブルだったが、「喫煙OK」だったのが私にとってはキツかった。ことに禁煙レストランが増えた昨今、そこならば心置きなく煙草が吸えるということで愛煙家が集まってくる風情があり、もう、イマドキ珍しいほどの紫煙に店内が包まれきっている状態だったのだ。

ところが数ヶ月前から改装を始め、先日、店名が変わってオープンしたのでおそるおそる行ってみたら、ランチメニューの手軽さと値段はほぼそのままに、テーブルから灰皿が消えていた。店内も、いかにもビジネスマンのたまり場みたいな、仕切りがなくがらんと愛想のない内装だったのが、柱が増えて店の端まで素通しにならない個感覚が増していた。愛煙家には大変申し訳ない事態だが、私にとっては喜ばしいことである。なにより、落ち着けるのがいい。雑誌や口コミで話題になりそうもない普通さかげんも、とても好ましい。

ただひとつ、その店、マリア・ピアーネなんとか……の欠点は、店名が長くて覚えられないことであった。願わくば、閉店の憂き目にあわず、平穏に営業しつづけんことを。
by shino_moon | 2009-08-29 20:20 | | Comments(2)
Commented by at 2009-08-29 20:57 x
愛煙家の私としては、心置きなく一服できる店が減っていって、淋しい限りの今日この頃です。
珈琲をいただきながら、本読みながら、一服ってのがホッとするんですけどね。。。
Commented by しの at 2009-08-29 22:31 x
恵さん、こんばんは。
はい、私はタバコをやりませんが、愛煙家が心置きなく一服できる店というのがあってもいいと思います。需要もあると思うんですよね。
でも、趨勢は禁煙に流れるばかり。どうしてこう、なにもかもがどちらか一方に偏るのでしょう。


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