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若冲と蕪村、売茶翁

サントリー美術館でやっている「若冲と蕪村」を観てきた。

今回、絵だけではなくて賛(=絵のなかに書かれる詩歌や文章)がとても気になったのは、蕪村のおかげかもしれない。蕪村は絵も賛も自分で描いている(自画自賛というのは、元来悪い意味の言葉ではなかった)ことが多いので、つい、ひとつの画面の中の絵と文字のバランスが気にかかる。絵によって書体もいろいろと工夫している。画賛もいいけれど、書簡の文字がのびのびしていて、さらに好きだ。絵付きの手紙を蕪村から貰ったら、うれしいだろうなあ。

若冲では、初めて観た「髑髏図」。これは、拓版画という手法の版画で、ふつうの版画とは白黒が逆転している。つまり、線を白く抜く方法だ。

この「髑髏図」に賛を書いている高遊外という人は、別名売茶翁といって、黄檗宗の僧であり、煎茶を広めた人なのだそうだが、いま読んでいる本(『書を読んで羊を失う』鶴ヶ谷真一著)の中に、偶然、この売茶翁のことが書いてあった。こういうの、シンクロニシティと言うんでしたっけ?

それはどうでもいいが、この売茶翁という人の生き方が、とても面白い。布施に頼らず、敷物と茶道具を携えていろんなところに出かけて行き、「通仙亭」という煎茶の店を開いて客を待ち、客が来れば煎茶をひさいで生計を立てたという。いまでいう喫茶店だ。若冲の描いた絵に83歳の売茶翁が賛を書いた「売茶翁像」も展示されていた。着衣の長い袖が自由闊達な感じを醸し出している。

ところで、この展覧会、前半と後半ではほとんど作品が入れ替えになる。サントリー美術館はあまり広くなくて、疲れなくていいのだが、それだけ展示数も少ないということで、こういうことになるのか。商売が上手いのか。まあ、もう一回行きますけどね。
by shino_moon | 2015-04-03 11:33 | 展覧会 | Comments(0)


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