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リュミエール!(2016年)

「映画の父」と言われるリュミエール兄弟の撮った映像を観たいと、ずっと思いつづけていたのが、やっとかなった。これは、19世紀末から20世紀初頭にかけて、兄弟が自ら発明したシネマトグラフ(世界で初めての撮影可能な映写機)を使って撮影した実写映画のうち、108本を繋いで構成された作品だ。

当初のシネマトグラフで撮影できる映像の長さは1本50秒。街の風景や当時の人々の暮らしを実写しているもののほか、コント風に構成されたストーリー映画もあるが、いずれも、ただカメラを回しているのではなく、フレーミングや演出がなされ、ものや人の動きが生き生きと撮られていて、わくわくするほど面白い。リュミエール兄弟は、シネマトグラフを発明することで「映画」を発明したのだ、ということが実感できる。

『ラ・シオタ駅への列車の到着』を観た当時の観客が、スクリーンの中を近づいてくる機関車の偉容に恐怖した、というのは有名な話だけれど、その感覚こそが「映画」そのものだと、いつも思う。技法を駆使し、演出を施してなお、予想をこえて映り込む「なにか」がある面白さ。そのすべてをひっくるめての「映画」が、私にとっての映画だ。

印象的な1本は『ラ・シエタ駅~』以外にもいろいろ。ひと組の夫婦とその子どものスリーショットの背景で風に揺れる木の葉の映像(『赤ん坊の食事』)には文字通り心がわしゃわしゃと波立ち、どこまでもカメラを追いかけてくるベトナムの女児の笑顔(『ベトナム ナモの村の少女』)には人間の美しさを教えられた。

音楽はサン・サーンス。リュミエール研究所のティエリー・フレモーのナレーションがついているのだが、哀しいかな、フランス語の分からない身には、映像を眺めながら字幕を読む手間が煩わしい。もう一度、今度は字幕を読まずに映像だけを追う90分を過ごしたい。

ともあれ、撮影すること、演出すること、演じること、の喜びが充満した1本。

監督・脚本・編集・ナレーション:ティエリー・フレモー

by shino_moon | 2017-11-30 18:07 | 映画(ラ行) | Comments(0)


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