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ドラゴン・タトゥーの女(2011年)

観てからずいぶん時間が経ってしまった。

観た直後、とてもとても面白くて、思わず書店に走って原作などを買ってしまい、いまも読んでいる。
で、そんなこんなで書かないで寝かせている間に、この映画って、もしかしたら、『風の谷のナウシカ』なのかな、という気がしてきた。

あ、うーん、これはあまり正確な言い方ではない。

この映画のタイトルロールであるリスベット(ルーニー・マーラ)は、鼻やら口やらにピアスをしていて、成人しているにもかかわらず後見人の保護観察下に置かれている、ちょっと曰く付きの女の子だ。彼女はほとんど笑わないし、必要なとき以外口を開かない。悲惨な幼少期を過ごしたので、簡単に人を信じることができず、打ち解けることもない。

でも、そうした属性を、いわゆる「武器」にして生きているわけではない。調査員としての腕はスペシャルで、洞察力、分析力にも優れ、勘も鋭い。雇い主に仕事ぶりを評価され、認めさせることで、自立して生計を立て、理不尽なものには自分ひとりで立ち向かい、解決してゆく。「この人」と確信したら信じて行動を共にする聡明さもある。要するに、「ナイーブ」というのとは少し違う強度がある。

そういうところに、私はすっかりやられてしまった。こういう女の子が好きだから、この映画を存分に楽しめたのだ、と思う。

原作を読むと、主人公ミカエル(ダニエル・クレイグ)が発行している雑誌『ミレニアム』の背景や、ミカエルが自伝執筆を請け負うヘンリック・ヴァンゲル(クリストファー・プラマー)の一族のエピソードが分厚く、しっかりと描かれていて、物語としてもすこぶる面白い。

この原作から、フィンチャーはかようにみごとな「アイドル映画」を創出したのだ。

と、かんたんに「アイドル映画」などと言ってしまっていいのだろうか。うん、たぶん、いい。はからずも、この映画を観た友人が、リュック・ベッソンの『レオン』や『ニキータ』を思い出したという。

で、私も思い出した。ベッソンのニキータはいわゆる「ナイーブ」の典型で、ああいうのがじつは私はちょっと苦手なのだ。でも、リスベットにはそれを感じなかった。その一番大きな理由は、リスベットに恋愛をさせなかったからなのだけれども、だからこそ、あのラストシーンがどこへ向かうのか、とてもとても気になるのだ。

ひとつだけ。劇中、猫のエピソードはああいう風に使って欲しくなかった。あのくだりは不必要でしょう。断固として不必要です(キッパリ)。

ダニエル・クレイグ、ルーニー・マーラ、どちらも適役。このふたりは、ピンでもアンサンブルでも、すこぶる良い。ヘンリック役のクリストファー・プラマーは、この映画ではなく『人生はビギナーズ』で本年度のアカデミー賞助演男優賞を獲得している。82歳。

監督:ディビッド・フィンチャー
出演:ダニエル・クレイグ、ルーニー・マーラ、クリストファー・プラマー、ロビン・ライト、ステラン・スカルスガルド ほか
by shino_moon | 2012-03-13 16:56 | 映画(タ行) | Comments(4)
Commented by tenki00 at 2012-03-13 19:44
なるほどなあと感心しつつ拝読。

小説はちょっと逡巡。そのまえにスウェーデン映画(?)の3部作シリーズを借りて観ようと思ってます。
Commented by shino_moon at 2012-03-14 07:34
tenkiさん

スウェーデン映画の3部作なんてあったんですね。
しかも、日本でも公開されていたとは。知りませんでした。
私も探して借りてこようと思います。
原作はほんとに面白いし(帯に、読書家だったという今は亡き児玉清さんのコメントがついています)、翻訳物にしては読みやすいのがありがたいです。


Commented by feliza at 2012-03-14 09:23 x
こんにちは。あちこちで面白いという話を聞いていたので、私はまずスウェーデン版を見ました。こちらでのアップも楽しみにしていました。
スウェーデン版のリスベットがあまりにインパクトが強くてハリウッド版を見るのをためらっております。(ハリウッドとの比較も面白そうですが。)
今、原作を読んでいますが、リスベット、原作通りです。ミカエルもいい味を出しています。ミレニアム2と3も近いうちに見るつもりです。
どんより暗く閉ざされたスウェーデンの雰囲気がよく出ています。スウェーデン映画、侮れません。
Commented by shino_moon at 2012-03-14 22:06
felizaさん

こんばんは。
スウェーデン版、ご覧になったんですね。
書いて下さったことを読んで、ますます観たくなりました。
リスベットのルックスや存在感がこの話では重要なファクターですので
これはぜひ両方観て、見比べてみたいと思います。

ハリウッド版は、原作を読んでも、印象が薄まらないところがすごいです。
原作に忠実につくっているのに、ちゃんと別のものになっているという気がします。


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