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キャロル(2015年)

『キャロル』(トッド・ヘインズ監督)。

直前にウディ・アレンの『ブルー・ジャスミン』をDVDで観たばかりで、ジャスミン役のケイト・ブランシェットを目の奥に残しつつ、キャロル役のケイト・ブランシェットを観たわけだけれど、その演じ分けに感動するばかり。

ジャスミンはすべてを失った元セレブ、キャロルは冷えた夫婦関係に悩みつつ若いデパートガールを愛するセレブ。どちらもゴージャスなのだが、その質が違いを細かく演じ分ける。目の配り方、間の取り方はもちろん、笑うときに使う顔の筋肉が違う。

そういえば、ケイト・ブランシェットは見るたびに印象が違う感じがある。見た目を大きく変えてくるわけではなく、マイナー・チェンジで別人になる。ひとつの映画の中でもさまざまな役柄を演じ分けていて、この映画では、夫に苦しむ妻、娘を溺愛する母、若い女性を愛する年上の恋人、社会奉仕のための資金を集めるセレブを、ひとつの人格のなかに統合する。見ていて飽きない。

相手役のルーニ・マーラも『ドラゴン・タトゥーの女』(2011年)とはガラリと印象を変えてきたが、基本はクール・ビューティで、目に特徴がある。彼女、少しうつむき加減に上目遣いをするとき、オードリー・ヘップバーンに似ていると思うのは私だけ?(異論は認める。)

ともかく、女性同士ということをあまり意識しないで見られる、上質の恋愛映画だ。「人を好きになるのに、男か女かというのはあまり関係がない」ことを、とてもうまく語っている映画だと思う。

ただ、恋人なんだけれど、お姉さまに憧れる妹、人生の先輩後輩、みたいな感じになるのは、男と女ではありえない女同士ならではの感覚ではないかなあ。そのあたりも意外にリアルに伝わってきて、面白かった。

原作はパトリシア・ハイスミス。

監督:トッド・ヘインズ
出演:ケイト・ブランシェット、ルーニ・マーラ、カイル・チャンドラー、ジェイク・レイシー、
サラ・ポールソン ほか
by shino_moon | 2016-02-26 11:36 | 映画(カ行) | Comments(0)


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