人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ハドソン川の奇跡(2016年)

豊洲のシネコンで鑑賞。

夢落ちや回想シーンを交えた凝った構成でありながらあのスピードとサスペンス、しかも、機械と人間、社会(会社)と個人の対立と共生を描き、人間とは何かを考えさせる圧巻の96分。

イーストウッドにこんな横綱相撲をとられたら、もう、何も言えない。

劇場で二列後ろに座っていた女性3人組のひとりが、映画が終わり、劇場に灯りが点いたとたんに言った。

「こんな面白い映画、久しぶりに観た。この映画にはあらゆるものが網羅されているのよ。これが映画なの」

って、奥さん、その通りなんですけど。まだ客の残っている劇場でこんなことを叫ぶ恥ずかしさも忘れて、奥さんったら。

トム・ハンクスを除いてキャストが地味なのも、いつものイーストウッド映画と同じ。そのトム・ハンクスも見慣れたドヤ顔を封印し、苦悩や不安と同時に、経験を積んだ職業人としての誇りや他人の命を預かることへの敬虔を、抑制を効かせて好演している。

人間には「感情」があり、そのやっかいさを誰もが内に抱えている。けれども、そういうものである人間だからこそ乗り越えられる危機もあるのだということの尊厳を、この映画は静かに教えてくれる。


監督:クリント・イーストウッド
出演:トム・ハンクス、アーロン・エッカート、ローラ・リニー、クリス・バウアー ほか
by shino_moon | 2016-10-22 13:04 | 映画(ハ行) | Comments(0)


<< 父の入院 君の名は。(2016年) >>