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空似

 今日の午後6時頃、地下鉄有楽町線に乗っていたら、見覚えのある人が乗ってきて、目の前の席に座った。
 蓮池透さんだった。
 真ん中分けの短髪、細面の顔、ちょっと垂れた目、特徴のある顎、細い首、なで肩。どう見ても蓮池透さん、なのである。
 なのだが、「まちがいない!」と言い切れないものが残る。蓮池さんはたしか50歳くらいのはず。それにしては肌がつやつやとしているような気がする。ポロシャツにジーンズ、黒っぽいジャケットというスタイルは、こざっぱりとして感じがいいが、それなりに有名人となってしまった蓮池透さんが、ここまでラフな恰好で、地下鉄に乗るだろうか。
 それよりもなによりも引っかかったのは、手ぶらだったことだ。鞄らしきものをもっていない。蓮池透さんがこんな時間に、どこかへ出かける、あるいはどこからか帰るのに、鞄をもっていないということがあり得るだろうか。
 しかし、顔を含め、その人の発している雰囲気は、なんとも蓮池透さんっぽいのである。人から見られるのを嫌がっているように、寝たフリをしているのも、いかにもそれらしい。
 たぶん95%本人、というあたりをつけて、私は彼よりも先に電車を降りた。

 帰宅して、さっそく蓮池透さんの写真を探して見た。
 見た途端、あっと思った。違う。そっくりだが、違う。なにかが違う。生え際、頬の皺、目の垂れ具合。微妙に違う、ような気がする。どこがどうなのか、はっきりとは言えないのだけれど。
 そして不思議なことに、写真を見ているうちに、今度は、電車の中で見た人物の顔がぼやけて、はっきり思い出せなくなってゆく。写真につられて、記憶の方が変質をはじめたらしい。
 結局、本人なのかどうか、どんどん分からなくなってしまった。

 おすぎとピーコとか松平健だったら、95%の空似なんてあり得ないだろう。白か黒か、だ。蓮池透さんという人物だから、こういうことが起こる。でも、もしかしたらヨン様でも、こういうことが起こりそうな気がする。
 その境目はなんなのだろう、なんて考えてしまう。
by shino_moon | 2005-04-19 23:43 | | Comments(0)


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